舞台「グリーンマイル」10/14ソワレ観賞(ネタバレ含む殴り書き・備忘のための感想)

加藤くんのお芝居が「グリーンマイル」と聞き、まず映画のDVDではなく原作に手を伸ばしたのは単純に私にとっては小説のほうが身近なメディアだからで、トム・ハンクスのポールを知らずに加藤くんのポールに触れられたことになる。

小説に付された解説はあまり読まないようにしたのだが、つい目に入ってわすれられなかったのが「ジョン・コーフィのイニシャルはJC、つまりJesus Christ」と書かれていたことだった。

以前加藤くんが「西洋の映画や小説などの文化を楽しむためにはキリスト教の知識が不可欠(なので学生時代よく聖書を読んでいた)」という発言をしていたのを覚えている。「グリーンマイル」の筋書きもまさにそれにあたるのかなと思った。人々の為に罪を負い十字架にかけられたイエスはまさにジョン・コーフィの死に感じられる。

また、原作から脚本にする段階で刈り込まれたエピソードのバランスが個人的にとてもよかった。原作は(薄いが)文庫本6冊もある上に、読んでいて「あ、これも伏線だったんだ!」という思いがけないこともかなりあったのだが、そのあたりが整理され舞台できちんと完結していた。刈り込みにより長く生き残ってしまったポールの孤独がよりひきたっていたのではないか。

把瑠都さんのコーフィは「よくぞ把瑠都さんをこの役に!」と思った。からだの大きさや台詞の感じなど、日本でこの芝居を上演する上でこの人以外にない、というキャスティングに感じた。

中山さんのブルータスはかっこよかったな…。上司であるポールを支え協力する姿。

鍛治さんのウォートンは「イヤなヤツ」というよりも気持ち悪くて気持ち悪くて、なかでも看守三人が話している周りをうろつくところはもう…鳥肌がたってしまった。

伊藤さんのパーシーは…小説でもそうだけどこちらのほうがイヤなヤツだなあと。でもパンフレットで中山さんが「当時はパーシーの態度のほうが当たり前だったかも」みたいにおっしゃっていてはっとした。

永田さんのディーンは可愛かった!「頑張って、頑張って!」って途中拳を握って応援してしまった。

加納さんのデラクロアはもちろん死刑囚だし罪を犯しているんだけど、ミスター・ジングルスを可愛がる様子がいじらしくさえ思えた。所長の奥さんも加納さん?息を詰めて見すぎたみたいであやふやになってる…

小野寺さんのムーアズは原作もそうだけど「ずるい!」って思ってしまって。所長なんだから偉いしちゃんとしてるんだけど奥さんに関するところがぐずぐずとしていて。そこがたぶん人間らしさというか、そういう演出の中なんだなと。

劇場という閉じられた空間で息を詰めながら目の前で展開される芝居に没入できてよかった。中でもポールとコーフィがトラックの荷台で語り合うシーンは、動いていないはずのトラックが動いているように見えてしまったほどだ。(二人が身動きすることにより多少トラックも動いていたとは思うが、そうではなくて)